家族で考えたい資産の話

親子で考える資産セミナー(札幌)

家族の間でも、なかなか話題にしにくい「資産」の話。そんな風に感じている人も多いのではないでしょうか。不動産や株・債券などの有価証券から「金」に代表される貴金属など資産はさまざま。今ある資産をできるだけ家族にとって良い形で受け継いでいくにはどうすればいいのか。経済アナリストの豊島逸夫さんと、フリーキャスターの佐久間あすかさんが、世界経済が混迷を続けるいま、どのように資産を守り、運用していけばいいのか語り合いました。
ここでは、9月21日、札幌グランドホテル(札幌市中央区)で開催された「親子で考える資産セミナー」(主催・北海道新聞社、協賛・田中貴金属工業株式会社)の要旨を紹介します。

主催:北海道新聞社 
協賛:田中貴金属工業
日時:2015年9月21日(月) 
会場:札幌グランドホテル

親子で考える資産セミナー〜賢い貯“金”で資産を守る〜

第1部 親子で話し合っておきたい資産のこと

将来に強い危機感
佐久間
お金の話は家族の間でもなかなか話題にしにくいところがあります。
豊島
親子、特に母と娘の結び付きは強く、会えばおしゃべりが止まらない関係という人も多いのではないでしょうか。それでも、意外にお金のことについての話はあまりされない。でも、親の資産をいつかは子どもが受け継ぐことになるわけで、とても重要なテーマです。とはいえ、親が亡くなった場合を前提にした話なので、さすがに切り出しにくい。親子が気楽にお金の話もできるようなきっかけを作りたい、そんな思いから今回はお話をしたいと思います。
佐久間
経済セミナーや金セミナーに対する関心が若い世代にもかなり広まってきたようですね。
豊島
かつて私のセミナーに集まってくださる方は、50〜60代の男性が多かったのですが、大分様子が変わってきました。最近では、20代後半〜30代の女性が増えてきたのです。参加者のアンケートによると7割が老後について不安と答えていました。今の給料がどこまで増えるか分からない、年金に頼るのも不安。このような金銭的な不安感が強いのです。お金は投資というより、貯めるもので、給料から蓄えたものを少しでも守っていこうと考えている方が多いです。
佐久間
私も就職氷河期世代ですから、その考えは十分に理解できますね。最終的には自分のことは自分で守るしかないと思っていますので、お金に対しても保守的な姿勢が基本です。ところで近年、金に対する関心が高まっていますが、資産としての金と聞くとあまりピンとこない方も多いと思います。
豊島
金は預金や株と違って、利息や配当を生むものではありません。だから私は「金投資」という言葉を使いません。投資というのは、お金に働いてもらって配当や分配金を稼いでもらうことが本筋で、正確には金は投資とはいえません。安く買って高く売るという考えもありますが、これは「金投機」であって投資とは異なります。では、金は相続を含めて資産としてどんな意味があるのかといえば、10年後も20年後も、経済危機があろうともインフレがあろうとも、一定の価値を保ち、デフレで多くのものが破たんしても「紙くず」にはならないという、いわゆる「資産保全」の役割が最大の持ち味なのです。
資産を守り、愛を伝える「金」

佐久間
「何かあった時の金」という言葉もありますね。
豊島
金は、株や債券と違って信用リスクがない。株や債券は発行する企業や国が破たんすれば無価値になる可能性がありますが、金の価値が損なわれることはありません。純度や重さが同じなら金の価値は万国共通です。ドルや円は刷れますが、金は刷れません。勝手に人間が作れないというところに、金の価値のよりどころである「希少性」の源があるのです。
佐久間
震災など有事の際、「燃えない資産」としての価値もあります。
豊島
もう一つ、私がこれこそ金の魅力の原点と思ったエピソードがあります。スイス銀行時代にチューリヒで同僚の家庭の夕食に呼ばれた時のこと。7歳になる娘さんと3人のファミリーでした。夕食後、リビングで雑談している時、奥さんが分厚いアルバムを持ってきて見せてくれました。1ページ目には娘さんの1歳の時の写真と1枚の金貨が貼ってある。2ページ目には2歳の時の写真ともう1枚の金貨。これを毎年続け、30歳で結婚となれば、30枚の成長の記録と金貨を、嫁ぐ日の前の晩に母から娘へのプレゼントとして渡すのだそうです。嫁いだ先で、今後どんな運命が待っているのか分からない。もし何かあった時には、この金貨を売って凌ぎなさい、という思いやりの言葉を添えて。思わずジーンときて、涙が出そうになりました。金貨というのは、触ればひんやりする金属ですが、娘を思う母の愛情がこれほど見事に伝わるのです。ここに貼ってあるのが株や債券だったら、もっと味気ないギフトになっていると思います。金には希少価値とともに、愛情を伝えるセンチメンタル・バリュー(感情価値)があることを実感しました。
異なる2つの金マーケット
佐久間
いい話ですね。母娘の絆の深さに感じ入りました。インドのデリーで豊島さんと取材した時、ちょうど結婚式シーズンに訪れたこともあり、金のニーズはすごかったです。
豊島
インドでは結婚する娘にどれだけ金を持たせられるかが親の甲斐性とみられます。できるだけ多くの金を持参させようと必死なのです。
佐久間
日本と違っておしゃれとして金のアクセサリーを身に付けるというより、代々、資産を引き継いでいくために身にまとっているといった感じでした。
豊島
金にはまったく異なる性質を持つ2つのマーケットがあることを、皆さんに知っておいていただきたいと思います。一つは金融商品重視の先進国。もう一つは現物重視の新興国です。例えばニューヨークでは金の現物などほとんどなく、ただデジタルデータの数値をもとにチャートを見ながら金が買われたり売られたりという世界です。インドと対比して分かるように、金の取引といっても異なる市場が存在しているのです。短期的な値動きを見てペーパーゴールドを取引して収益を狙う先進国と、資産保全のために現物を購入したら基本的には売ることのない新興国。今までは先進国の金が市場を引っ張ってきましたが、今後は新興国の金が市場を引っ張っていくことになると思います。

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※講演者は、セミナー内容につき、その正確性や完全性について意見を表明しますが、その内容を保証するものではありません。また、過去の実績や予想・意見は、将来の結果を保証するものではありません。

プロフィール

豊島逸夫事務所代表
豊島逸夫氏 としま・いつお

1948年、東京都生まれ。一橋大学経済学部卒、三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行後、スイス銀行で国際金融業務に配属され、外国為替貴金属ディーラーとなり、チューリヒ、ニューヨークで豊富な相場体験を蓄積。ワールドゴールドカウンシル(WGC)日本代表を務めた後、2011年に豊島逸夫事務所を設立。金市場をはじめ、国際金融、マクロ経済の動向などを意欲的に発信。
フリーキャスター
佐久間あすかさん さくま・あすか

千葉県出身。四国放送(徳島市)のアナウンサーとして3年間勤務。その後、テレビ大阪の経済・報道ニュースキャスターを3年間務め、2011年10月から日経CNBCキャスターとして活躍中。
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