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第2部 豊島逸夫さんに聞く わが家の資産と金
- 佐久間
- 相続資産として金は有効ですか。
- 豊島
- 金には相続資産として三つのメリットがあります。一つ目は、金はどれだけ保有していても固定資産税が全くかからないこと。二つ目は、金貨や小さな地金などに小分けできること。最近では、相続のときに小分けできるからと、1枚十数万円の金貨を何十枚と買う方も増えているようです。三つ目は、いつでも好きな時に売却できること。金は貴金属販売店に持って行けば、その日の価格ですぐ買い取ってもらうことができます。
今は安いプラチナ
- 佐久間
- 今、金よりプラチナが安いのはなぜでしょうか。
- 豊島
- 希少性から見れば、本来はプラチナの方が価値は高いはずです。逆転現象の原因の一つは、2015年に発覚したフォルクスワーゲン(VW)の排ガス検査の不正問題です。プラチナは、ディーゼル自動車の排ガスに含まれる有害物質を吸収・浄化する触媒として使用されます。しかしVWの問題でディーゼル車離れが起こり、プラチナ需要が減退するのではないかといった懸念から、プラチナの価格はどんと下がりました。世界的な景気低迷で自動車販売もなかなか伸びないことも大きく影響しています。ところが、VWの問題にもかかわらず、欧州では温暖化防止や燃費の良さからディーゼル車は人気が高いため、大きく下がったプラチナの価格が徐々に戻ってきています。まだ割安感はありますが、今後、金との価格差は縮小していくと思います。
- 佐久間
- これから金・プラチナの価格がどうなるのか気になるところです。
- 豊島
- ロンドンに世界最大級のプラチナ鉱山を持つ会社がありますが、当分、新たに鉱山を開発する計画はないと言います。つまり、生産量が増える見込みがないということです。これから1年は、金とプラチナの価格は同じにはならないと思います。しかし、長期的にみれば、今後はプラチナが金より高くなるでしょう。
資産の10%は金で/何回かに分けて購入
- 佐久間
- 資産の中で金が占める割合はどのくらいがいいのでしょうか。
- 豊島
- 金はためておけば必ず価値が残ります。その半面、金の最大のデメリットは「配当金や利息を生み出さない」ということです。金は「もうける」ものではなく、「ためる」ものだと考えてください。短期的売買で利益を出すのではなく、現物をコツコツためて、経済状況が悪化するといった「いざ」という時に備えましょう。最終的に資産の10%ぐらいを金で持つことが理想的です。金は短期間のうちに価格が上下に変動するので、まとめ買いをしないでください。目標額(量)を決めて何回かに分けて購入することをお勧めします。
愛情伝える価値も
- 佐久間
- 資産としての金の魅力は。
- 豊島
- スイス銀行に勤めていたころ、同僚が分厚いアルバムを見せてくれました。1ページ目には娘さんの1歳の時の写真と1枚の金貨、2ページ目には2歳の時の写真ともう1枚の金貨が貼ってありました。スイスの家庭で女の子が生まれると、これを毎年続け、嫁ぐ日の前の晩に「もし嫁ぎ先で何かあった時には、この金貨を売ってしのぎなさい」と母から娘へ贈るのだそうです。金貨は触ればひんやりする金属ですが、子を想(おも)う親の温かい愛情が感じられます。金には希少価値があるのはもちろんですが、愛情を伝える「センチメンタル・バリュー(感情価値)」もあるのです。(文中敬称略)
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※講演者は、セミナー内容につき、その正確性や完全性について意見を表明しますが、その内容を保証するものではありません。また、過去の実績や予想・意見は、将来の結果を保証するものではありません。
プロフィール
- 講師
豊島逸夫さん としま・いつお
豊島逸夫事務所代表。三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行後、スイス銀行の国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラーとして活躍。独立後は豊富な相場体験をもとに金市場に限らず世界経済、国際金融についても多くのメディアで情報を発信する。 - MC
佐久間あすかさん さくま・あすか
フリーキャスター。四国放送のアナウンサーとして3年間勤務。その後、テレビ大阪の経済・報道キャスターを3年間務める。2011年10月から日経CNBCキャスターとして活躍中。