家族で考えたい資産の話

親子で考える資産セミナー(東京)

家族の資産を守り、引き継いでいく方法として、実物資産である「金(ゴールド)」に注目が集まっている。3月18日にマンダリンオリエンタル東京で開催した「親子で考える資産セミナー 賢い貯〝金〟で資産を守る」では、経済評論家で金の第一人者である豊島逸夫さんと、フリーキャスターの佐久間あすかさんが、金との上手な付き合い方について語り合った。

主催:日本経済新聞社 
協賛:田中貴金属工業
日時:2017年3月18日(土) 
会場:マンダリンオリエンタル東京

親子で考える資産セミナー~賢い貯“金”で資産を守る~

金の強みは価値が失われないこと

豊島
最近、私のセミナーには若者と女性の参加者が目立つようになりました。将来への不安から「まずしっかり勉強したい」と受講する人が増えているのです。
佐久間
今の20~30代は経済が低迷している時期しか経験していません。そのせいか、将来のために備えなければという意識は高いと感じます。
豊島
よく分かります。私が気になることは、衣食住には外国製品が多いのに、財布の中味は円だけということ。プロの視点で見ると円だけに賭けているリスクを背負っている状態なのです。
私のところには、円だけでなく外貨でも資産を運用したいと、財務省や日銀のOBも相談に来ます。彼らは日本の金融財政の現場を担ってきた人たちですから、その見立てには重みがあります。
将来への備えという意味で考えた場合、資産の分散先として選択肢の一つになるのが金です。私も長期運用で資産の半分はドルと金で持っています。
佐久間
なぜ金を持つのでしょうか。
豊島
金はためておけば必ず価値が残ります。阪神大震災のときも、米同時多発テロで超高層ビルが崩壊した際も、現場に保管されていた金の重量が失われることはありませんでした。さらに、円やドルは刷れますが、金は刷れないことも実物資産としての金の強みです。投資というより保険に近く、何かあったとき頼りになるものです。
私の場合はリーマン・ショックのときに助けられました。株で損失を出しましたが、運用資産の約2割を占めていた金の価格が上昇したおかげで、株の損失の大半を回収できました。あのときほど、金のありがたみを感じたことはありません。
佐久間
まさに保険ですね。
豊島
金というのは、利息はつかないし、ただ輝いているだけですが、いざというとき威力を発揮します。だから欧米では「金は嵐の晩に輝く」といわれるのです。資産運用の主役はあくまで株や債券などですが、運用資産の10%程度は金を備えておくとよいでしょう。
逆説的な言い方をすれば、金はコツコツためるだけで、役に立たない方がいいのです。ただ最近は金価格が上昇する場面が増えています。今は英国の欧州連合(EU)離脱やトランプ米大統領の就任など、大方の予想に反する「まさか」が起こる時代です。今後も世界情勢に影響を与える政治的なイベントが続きます。先が読めないことから金が買われているのです。
価格は長期上昇傾向、毎月コツコツと
佐久間
金価格の見通しはいかがですか。
豊島
上昇傾向が続くと見ています。先行き不透明な世界情勢もさることながら、金には底堅い需要があるからです。特に中国とインドの需要は強く、下値を支えています。
需要に供給が追いつかない恐れがあることも金価格を支える理由になっています。まだ採掘していない金鉱石は海底など掘ることが難しい場所に集中しており、産出量の大幅な増加は見込めません。
佐久間
プラチナ価格はどうでしょうか。
豊島
プラチナは、自動車など産業用需要の減少懸念から大きく値を下げました。金と並行して割安感のあるプラチナを買っておき、将来的に価格が上がった場面で売却するのもよいでしょう。ただし、プラチナは短期的な価格の乱高下にさらされやすいので注意が必要です。
佐久間
金はいつ、どのように買うのがよいでしょうか。
豊島
金は基本的にもうけるためのものではなく、将来のためにコツコツためるものです。女子会1回分、居酒屋1回分のお金で毎月購入していくことを勧めています。
そこで注目したいのが「純金積立」という方法です。これは毎月決まった金額の金を購入していくもので、金価格が高い日には少なく、低い日には多く購入します。そうすることで、価格変動リスクを抑えて効率的に買うことができます。
佐久間
親子での資産運用という観点では、金にはどのような魅力がありますか。
豊島
相続資産としての金を不動産と比較してみると、①固定資産税がかからない②子どもや孫の数だけ小分けできる③流動性が高く、いつでも売却できる――という強みがあります。最近は相続対策のため金貨をまとめ買いする人もいるようです。
世界的に著名な投資家のジム・ロジャーズ氏は、来日すると日本製の金の仏像やカップなどを買っていきます。私が「金製品は投資に向かないのではないか」と聞くと、「これは娘のためだ」と言います。「10~20年後の金価格を考えれば割安だし、長期的に持つためには、地金より何かに役立つものや鑑賞できるものの方がいい」と言うのです。
「投資の神様」と呼ばれる同氏が、資産を残す手段の一つとして金を選んだという事実が重要です。大切な家族の資産を引き継ぐ親子での資産運用として考えるのであれば、こうした金製品も選択肢になると思います。
佐久間
金は「親子」というキーワードにふさわしい商品かもしれませんね。
豊島
私がスイス銀行に勤めていたとき、同僚の家で金貨アルバムを見せてもらう機会がよくありました。まな娘が誕生日を迎えるたびに、誕生日の写真と金貨を1枚ずつ収めていき、30歳で結婚となれば、30枚の思い出の写真と金貨を嫁ぐ前夜にプレゼントするのだそうです。嫁ぎ先で何かあったら、金貨を売ってしのぎなさいという親心です。こんなに思いのこもったプレゼントがあるでしょうか。
佐久間
ご両親の愛情を感じます。
豊島
これが金の原点だと思いました。金は冷たい金属ですが、温かい愛情を伝える働きがあります。金には希少価値だけでなく、センチメンタルバリュー(感情価値)があるのです。
佐久間
金との上手な付き合い方がよく分かりました。本日はありがとうございました。

※講演者は、セミナー内容につき、その正確性や完全性について意見を表明しますが、その内容を保証するものではありません。また、過去の実績や予想・意見は、将来の結果を保証するものではありません。

プロフィール

講師
豊島逸夫さん としま・いつお

豊島逸夫事務所代表。三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラーとなる。独立後はチューリヒ、ニューヨークでの豊富な相場体験をもとに、金市場に限らず、世界経済や国際金融についても多くのメディアで情報を発信、活躍中。
MC
佐久間あすかさん さくま・あすか

フリーキャスター。四国放送(徳島)のアナウンサーとして3年間勤務。その後テレビ大阪の経済・報道ニュースキャスターを3年間務める。2011年10月より日経CNBCキャスターとして活躍中。
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